
2020年4/1の投稿では、経営基盤である個々のお客様が如何に農家にとって大事かをお話ししました。
また前編では、国や自治体といった超太い柱や卸業者のような太い柱も大切ですが、個人のお客様のような1本1本の柱は細くても、その細い柱が束となればなかなか折れることはないとお話ししました。
ここ後編ではその実例として、ある農家さんの直売所の改善事例を説明します。
ある農家直売所のV字回復事例
図1左肩をご覧になっていただければわかりますが、この実例は愛知県の(有)はっぴー農産さまであり、今回データー提供など全面的にご協力いただきました。
あらためて簡単にはっぴー農産さまを紹介させていただくと、1998年に農業法人化された経営面積約60Haのお米農家です。トヨタ自動車の豊作計画に取り組むなど、若くて先鋭的な農家と言えるでしょう。
図1)H27年産のお米を販売している時の直売所が最も元気がなかった頃だそうです。H25年産時の販売を100%とすると、H26年91.1%、H27年88.2%と徐々に売上げが下がり、総売上げに占める直売所の売上比=直販比は12%でした。
改善活動に取り組み、結果は時間の経過とともにハッキリします。
翌年H28年産時には、既にH25年時の売上げにV字回復していることがわかります。年を追うごとに売上げは伸長し、H27年88.2%を底にH30年産時には127%まで売上げを伸ばすとともに、直販比も18%まで広げています。
これは一人ひとりの直売所のお客様に向き合い、地道な改善活動を行ったはっぴー農産さまの努力の賜物にほかなりません。
H30年産でグラフは終わっていますが、その後も成長は止まりません。
このコロナ禍ではさらに直販比を伸ばし、総売上げを支える屋台骨にまでになっているそうです。
はっぴー農産さまもお米農家の例にもれず、飲食店などにも卸していましたが、このコロナ禍の時代、飲食店からの相次ぐキャンセルの中、直売所についている個人のお客様に支えられることになったのです。
まさに一人ひとりのお客様が小さな細い柱となり、束となって経営基盤をゆるぎなく支えたからこその結果と言えるでしょう。
直売がうまくいかない様々な原因と真因
図2は前段の直売所の改善活動において、真因だけにフォーカスしたものです。
直売がうまくいかない原因は他にも山ほど考えられました。
例えば…
■商品そのもの
・品質や価格、品ぞろえ
・袋のデザイン
■お店
・入りやすさ、出やすさ
・お店の装飾
■接客応対
■広告宣伝
…あげれば原因はきりがないほどです。
しかし、広告宣伝としてテレビコマーシャルをすることが答えでしょうか?
あるいはリッツカールトンのような接客応対をすべきでしょうか?
それともお店の外装や内装、駐車場などを整備すべきでしょうか?
いまさらながら、売っているお米などの品質や価格を見直すべきでしょうか?
トヨタ式の改善では、現地現物の調査を実施し、数ある原因の中から真因を探り出します。
ここでの真因の明言はあえて避けますが、図2を見れば想像がつくはずです。
ざっくり言うと「米農家の直売所としてお客様の期待に応えきれていない」というのが真因で、改善対象としてターゲットを明確化し、ターゲットに見合った改善活動をするため、それぞれツールを造り込み運用を標準化しました。
その結果がV字回復です。
自律的に改善ができる=変化に対応できる
この改善活動で大切だったことは「米農家の直売所」の理想に立ち返ることでした。
また自分たちの力で考え抜き、行動したことも大きいです。
数々の調査や活動から、現状と理想とのギャップを「自ら考え悩み、試行錯誤し、たくさんの失敗と、小さな成功の収斂」により埋め、自律的に問題解決ができる集団に変わったからこその成功でした。
自律的に問題解決ができる集団とは、すなわち時代のどんな変化にも対応できる力をつけたこととなります。
また今回あらためて経営基盤として個々のお客様にフォーカスを当てて活動したことにより、新規のお客様を増やし、既存のお客様を守ることにより、お客様、一人ひとりという”柱”が増えると同時に、リピートオーダーから”太い柱”となったわけで、建物の柱と同じように、強ければ強いほど外的環境の“変化”に対して動じることがないため、コロナ禍をかわすことにつながりました。
これからも、どんな時代になっても、はっぴー農産さまは変わり続けていくことでしょう。また変わることにより、どんどん成長していくことでしょう。
これだけ激しく変わっていく時代の中で、変わらないでいることは退化と変わらないことだと戒めたいものです。
またこの実例のように、基本的には農家の経営基盤の強化、安定化は直売所などの6次化により実現するものです。
しかし必ずしも直売所を持つことだけが経営基盤の強化になるとは思わないでください。農家や状況によっては全く別のお客様が経営基盤となりうるからです。
さぁこれを読んでいただいている皆さんのお客様の中で、経営基盤の柱となりうるのはどなたですか?

