「あらためて真の会社元年として大海原に漕ぎ出す」
滋賀県近江八幡市の株式会社イカリファーム井狩篤士社長がトヨタ式農家改善.proのインタビューに応じ、今年の抱負は「あらためて真の会社元年として大海原に漕ぎ出す」と 2020年 年初の抱負を語った。
株式会社イカリファーム(以下イカリ)は、事務所を起点に半径約14Kmの範囲に計225Haの経営面積を持つ、米・麦・大豆を栽培する滋賀県近江八幡市の比較的大規模な農業法人だ。
社長の井狩篤士氏(以下井狩氏)は将来500Haの経営面積を視野に入れ「会社の発展・成長とともに、より地域から必要とされる イカリ になるべく、綿密な計画の元に着実な成功を遂げていく」と強い意気込みを語った。(聞き手 山謙@トヨタ式農家.pro 2020/1/11(Sat) )
山謙)新年あけましておめでとうございます。
早速ですが2020年も、わたくしこと山謙@トヨタ式農家改善.proと仕事をご一緒させていただきます。引き続きどうぞよろしくお願いします<m(__)m>
井狩氏)はい、こちらこそよろしくお願いいたします<m(__)m>
史子(奥様)ともども本当に頼りにしています。
山謙さんにコンサルを依頼するのは「なにより頼れる」の一言に尽きます。それもわたしだけでなく、妻からも絶大な信頼を得ているからです。
トヨタ自動車の豊作計画という農業ICTツールを導入してから、セットでカイゼンを導入することを決断しましたが、その頃から山謙さんはじめ、トヨタの改善スタッフの皆さまとお付き合いさせていただくようになりました。
しかしトヨタスタッフの中でも飛び抜けてたくさんの、そして変わった(笑)経験をお持ちの山謙さんの改善指導は他では受けられません。
製造~販売といった農業の川上~川下までを、トータルで改善・コンサルティングしていただけるところが最大の魅力です。
残念ながらトヨタの工場出身の方では難しいことで、製造部分については詳しいかもしれませんが、販売や経営の部分になってくると、山謙さんの販売店時代の経験や海外でトヨタ孫会社の社長を経験されてたことには及ばないのが正直なところですね。
以前トヨタの小集団改善活動を導入していただいたことがあるのですが、その際に「方針管理とセットで導入しないと意味ないょ」と山謙さんに言われたのがとても影響がありました。
もちろん最初は方針管理なんてわからなかったのですが、いまではこの方針管理とこれに基づくアクションプランや小集団改善活動は、イカリの正しい方向へ向かう成長の原動力となっているのは紛れもない事実です。
ない経験や知識をどう補うか?どう活用するか?
山謙)お褒めいただきありがとうございます。
わたしもイカリさんでお話しをさせていただく時は、意識して過去の失敗や成功の経験をわかりやすく、かつたくさんお話しして、イカリさんの知識や経験不足が補えるようにしているつもりです。
またおっしゃるとおり、方針管理の重要性に気づいていただき、それにもとづくPDCAの土台になるアクションプランを会社として導入したことは、大きな転機を迎えることになりましたね。
コンサルタントは顧客が持っていない知識と経験(知見)をアドバイスすることにより、顧客の成長を促すものなので、その知見が少ないより多いにこしたことはありませんし、またその知見が伝わるのは当たり前で、いかにその知見が実用に活かされるかどうかで顧客の成長が決まるものです。
つまり顧客が持っていない知識や経験をただ話すだけでなく、いかに成功する運用にしくみとして落とし込む、すなわち顧客が自律的に問題解決できるようになるかが重要です。
トヨタ式の仕事の進め方や改善は、まさにPDCAで進めることにほかなりません。
一見当たり前のことでも、このPDCAがきちんとできているところは多くはありません。
将来の500Haがゴールかどうかはわかりませんが、これからもステップを踏んで、250→300→400→500と、トヨタ式の考えで計画的に進んでいきましょう!
では早速年頭インタビューということで、あらためて農業に携わるきっかけから振り返っていきましょう。
自身の農業の起源への振り返り/同級生が○○してしまう
井狩氏)だいぶさかのぼって振り返ることになりますね(-_-;)
私の農業の起源は以前も自己紹介でお話ししました(後述のプロフィール参照)が、井狩家の長男でもあったので、家業を継ぐことはとても自然なことでした。
確かに子供の頃は貧乏な農家の子供だなぁとは本人としても思っていました(笑)が、姉や弟と違って家業を手伝うこと、また手伝って小遣いをもらうことは楽しいことでもありました。
一方で農業に苦労している父の背中を見て、漠然とした思いではありましたが安定した公務員になるとか、がっぽり儲けているイメージの社長になる、という夢も子供の頃抱いていました。
がしかし、大学在学中に北京大学へ短期の語学留学を経験したことが、就農を決定づけた最大の要因となりました。
北京大学は日本でいうところの京大のポジションですので、語学留学とはいえ世界中の学生が集まっています。
そんな世界から集まった留学生仲間との交流で分かったことは、やっぱり日本人って幸せだっていうことです。食べるものもある、屋根や暖房・冷房のある家がある、学校は義務教育で学べる、失業率は低い、一億総中流で貧富の差がない、挙げればきりがないほど幸せな国です。
もっともショックだったのは、どこの国の留学生かは忘れてしまうくらい衝撃でしたが、彼の国では同級生が餓死することがある、ということを聞いたときでした。
せめて自分の周りだけでも食べ物に困らない環境を作らなければいけない、と強く思った瞬間でもありました。
ハングリー精神/農業を続けるには生き残る力が必要
井狩氏)自分含めて身内が飢えるなんてぞっとする話ですが、きっかけはそのようなことでしたが、農業として続けていくにはハングリー精神も必要です。
世はグリーンツーリズムや農業に癒しを求めたりもしますが、そんなに甘いもんじゃあない。
近年では名だたる大企業が農業に参入したりもするが、撤退もままある弱肉強食の世界です。
かつての恐竜の栄枯盛衰同様、大企業だからといって必ずや農業界で生き残れるものでもない、とてもハングリーな世界なのです。
だから生き残るために大切なのは、とことん良い農作物を、1円でも安く作って、1キロでも多く反収を上げ、1円でも高く買っていただき、1円でも多く利益を出すことです。
1円でも多く利益を出すことによってはじめて、自身にはもちろんのこと、社員にも、そして協賛する方、地域の方にも還元することができるようになります。
「農」とは、私たちイカリのように直接生産するスタイルにしても、農産品の加工業や流通業、販売業や飲食業など、いろいろなスタイルでの関わり方があると思いますが、いずれのスタイルで関わるにしても「食という直接人の口に入るもの」なので、絶対の安心が求められる世界なので生易しいものではありません。
一方で私がおかしいと思うことに「食に求める行き過ぎた安全」があります。
たとえばコンビニのおにぎり、弁当や総菜など、添加物だらけです。
たしかに防腐効果であったり、食中毒を防止するためなのかもしれませんが、本末転倒になっていないか心配しています。
「食」つまり「農」の世界に、もっとまっとうで正直な安全・安心が必要だと思います。
我がイカリファームでは減農薬農法と循環型農法にこだわって農作物を育てています。
これにより、まっとうで正直なとことん良い農作物を作ることができるわけです。
ビジョンを掲げステップを踏む/綿密な計画の元に着実な成功を遂げる
井狩氏)とことん良いモノを作れる自負が、イカリファームにはあります。
しかしまだ1円でも安く作って、1キロでも多く反収を上げ、1円でも高く買っていただき、1円でも多く利益を出すまでには至っていないと思うので、年頭に当たりビジョンをしっかり掲げ、ステップを踏んで、計画を立て、その計画をもとにPDCAを回し、着実な成功を遂げていきたいと思っています。
そんなに遠くない将来、イカリの経営面積は500Haにもなるでしょう。
それだけ地域の方から必要とされているという証でもあります。
安心して任せていただくためにも、250Ha、300Ha、400Ha、500Haとステップをしっかりと踏んで、飛ばさず、躓かず、綿密な計画の元に着実な成功を遂げていく必要があります。
これはより地域から必要とされるイカリになるべく、会社を発展・成長させる必要があるということで、時間は待ってくれないと思っています。
そういう意味で今年は「あらためて真の会社元年として大海原に漕ぎ出す」という気持ちで、より良い農作物をお届けすることはもちろんのことながら、農業をもっと楽しく、もっとワクワク出来るものにするために、日々努力したいと思います。
山謙)はい、ありがとうございました。
あらためまして、今年もまた1年良い年にしましょう!
【プロフィール】イカリファーム井狩氏
井狩篤士 いかりあつし
昭和53年(1978)4月生まれ
滋賀県近江八幡市出身
滋賀県立大学環境科学部を卒業後、父親のもとに就農
就農後7年でイカリファームを設立し、平成27年には代表取締役に就任
子供の頃から「自分は貧しい農家の子」という認識の中、苗箱洗い10円/枚など家業である農業に積極的に携わり、農業や商いの感性を磨く。また北京大学へ留学した際には、世界各国の留学生との談話から、あらためて日本の優位性や食料の大切さなどを痛感、自身で食料を作ることができる就農を決意。
昨年は自宅と事務所の新築など将来の基盤造りに尽力した堅実派、41歳。
【法人概要】イカリファーム
株式会社イカリファーム
URL: http://www.ikarifarm.com/
FB: https://www.facebook.com/イカリファーム
設立:平成20年(2008)6月
経営面積:米87Ha 麦68Ha 大豆70Ha
農作物:米、麦、大豆の栽培
栽培特徴:減農薬農法および循環型農法
化学合成農薬および化学肥料の使用量を滋賀県の基準値の5割以下に削減し、環境保全型農業を実践する「エコファーマー」としても認定。
また、稲刈り後の稲わらを近江牛の餌として利用し、その牛糞をたい肥として圃場に入れ、循環利用。
藁以外のモミなどの有機体も、野焼きをする事なく全量土中に還元。

