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1日の中から真の仕事の時間を求める=実働率

真実の口
真実の口(サンタ・マリア・イン・コスメディン教会)

映画ローマの休日でもおなじみですが、ある教会の片隅にひっそりとある「真実の口」は、人の手をその像の口の中に入れると偽りの心がある者は手が抜けなくなる、あるいは手首を切り落とされるという伝説があります。
幸い私は入れても何も起きませんでした😁
今回は私達の人生で多くの時間を占める「仕事の時間」について、実働率というKeywordから「真の仕事の時間」とは何か考えてみましょう。

実働率と2つのカドウ率

「真の仕事の時間」を考えるためにまずは言葉の定義をしておきましょう。
実働率を語るうえで欠かせない言葉に「カドウ率」という言葉があります。
漢字で書くと「稼働率」と「可動率」の二つです。
稼働率とは定時稼働時間での生産能力に対して、必要生産数を作るのに必要な割合のことで、一般的には設備や機械の能力に用いられることが多いです。

図1;稼働率は必要数によって決まるため、決して100%が正解ではないし100%以上もあり得る

よって稼働率は図1のように、売れや需要によって100%以下にも100%以上にもなりうるので、決して100%が正解ではありません。
1000枚作れる能力があっても、500枚しか売れないのなら500枚以上造っては売れ残って廃棄せざるを得ません。

ではもう一方の可動率はどうでしょう?
これは100%を最大値として、常に100%であるべき設備や機械が動けるときに動ける値のことです。
生産設備を使いたいときに使いたいだけ動かせなければ意味がありません。
正に設備のジャストインタイムレシオが可動率のことで、稼働率と区別をつけるため我々は可動率のことを「べきどうりつ」と呼んでいます。

対して実働率は字の如く実際に働いている率として、人が稼働時間内でどれだけ働きがあったかを示す割合であり、設備や機械の稼働率と似ているが言葉をわけています。
ただし実働率は可動率と違って残業を含む稼働時間から休憩を除いたものが分母になるため、絶対に100%を超えることはありません

実働率を上げるには?その分母と分子

さてここまで、稼働率は売れによって変動する、可動率は100%であること実働率は100%を目指すものと理解していただけているでしょう。
つまり稼働はゼロが正しいこともあれば、売れすぎて追いつかない200%なんてこともあるし、生産設備や機械、工具などは常に100%使える状態にメンテナンスしておくことが重要です。

では100%を目指すべき実働率を100%に近づけるためにはどうしたらいいのか?
まずは実働率の分子である「仕事の時間」について着目します。

図2;1日の仕事の時間を3種類に分けて考える

図2のように1日の仕事の時間はこの3種類にわけられる。
正味作業:真の仕事の時間、付加価値を高めている時間
付随作業:正味作業をする上での必要悪、付加価値は高めていない
ムダな作業:本来の作業をするうえで何ら必要のない時間
この3つにわけられはするが物理的要因やしくみ上、付随作業とムダな作業をゼロにすることは不可能なのが現実です。
なるべく「動き」に人偏のついた「働き」を改善により目指すことになります。

図3;実働率の分子=仕事の時間=正味作業と付随作業とムダな時間

図3を見ていただくと、より実働率の分子である仕事の時間がわかりやすいですね。
残酷なことに「田植え」という仕事は、移植の瞬間のみが田んぼに付加価値を与えており、それ以外は必要悪の付随作業かムダな作業です。
工業においても何か組み立てる際に、部品と材料を組み付けたりしている瞬間は正味作業として付加価値を高めていますが、その部材を探したり運んだり、工具を手に取る時間など一切は付加価値を高めていないどころか、原価を高めているだけなのです。

よって実働率の分子比率を高めるための付随作業やムダな作業の改善はもちろん、余計な付随作業やムダがなくなれば分母を短くすることができ、結果実働率を向上させることができます。

真の仕事の時間とは?

図4;田植え作業の実働率

この図4はさらに田植え作業を1日行っている例として、わかりやすくデフォルメして現したものです。1日8時間を30分ずつ仕事や休憩を繰り返したものとします。
田植えを正味作業、圃場まで移動しなければ植えられないので必要悪の付随作業、苗を積み込んだりする段取りはムダな作業に便宜上分類しました。
なお便宜上で苗積みをムダとしていますが、トヨタ式的には本当にムダと分類するでしょう。
理由は本来、苗を運ぶことそのものがムダなので、軽トラに載せたり、田植え機にセットすることもすべてムダと分類することでしょう。
きっと育苗すらムダと判断するので、最も効率がいいのは種をそのまま圃場に投げ入れるのがトヨタ式的には最も効率がいいということになるでしょう。
もちろんこれは農業技術を一切理解していない、反収を顧みない愚かな考えではありますが、出来るだけ近くの圃場で田植えした方がいいとか、直播がいいというのはそのようなムダを潜在的に農業界が理解していて、トヨタ式に相通じることだからでしょう。

改善は「己を知る」ところから

トヨタの豊作計画やクボタのKSASなど、いま農業アプリは百花繚乱状態です。
このようなアプリの作業記録から実働率も簡単に導き出せます
1日の稼働時間内で付加価値を高める仕事の効率を上げれば、生産性は高まり、ムダな残業も減ることでしょうが、まずはそのために「自身の実働率を知る」ことから始めなければなりません。

図5;ある1日に占める作業時間を見える化してみた

図5はある農家の2020年5月21日の状況です。
色が塗られているのが何らかの農作業をしている時間で、塗りつぶされていない時間はアプリには入力することを登録されていない時間です。
これだけを見ても実働率100%には程遠いことがわかりますが、問題は100%でないことではありません

図6;2019年の実働率

図6は図5と同じ農家の昨年2019年の月別実働率です。
このように分母となる稼働時間が人によって大きく違ったり、農繁期と農閑期ではなぜか農閑期が実働率が高かったり、まずは事実を把握しなければ正しい改善はできません。

改善は 「己を知るところ」 から始めなければ正しい改善はできません
またどんなに優れたアプリケーションやシステムも、入力しているだけで活用しなければ何の意味もありません

いま実働率は何%ですか?
それはどうしてですか? 分母が長い? 分子が短い?
どうして分母が長く、長時間労働になりますか?
どうして1日の稼働時間は長いのに、分子としての作業時間が短いのですか?
分子の作業時間は正味作業時間ですか?
それとも付随作業?ムダな作業時間ですか?
ムダのない製造現場はトヨタにもありません、必ずムダはあります。
しかしムダがあることは問題ではありません
真の問題はムダに気付かない事ムダがどこにどれだけあるのかわからないことが大問題なのです。

どんな改善でもまず「己を知る」ところから始めることが大切です。

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