
人生は何事も判断の連続です。その判断、正しいですか?迷いますよね。
ランチにさしみ定食を食べるか?それともラーメンか?
そんな些細な決断から、
設備機器の更新にあたってI社製にするか?K社製にするか?
のような、場合によっては数千万円の決済など、迷うことはたくさんありますが、決めなければことは進みません。
仕事のうえでも社長であろうが従業員であろうが、様々な判断が付きまといます。
ここではその判断について、経済学でよく語られる「プロスペクト理論」に当てはめながら考えてみたいと思います。ちなみにプロスペクト(prospect)とは直訳すると「見込み・見通し・展望」といった意味があります。
『人は目の前に利益があると「利益が手に入らない」というリスクの回避を優先し、損失を目の前にすると「損失そのもの」を回避しようとする傾向がある』というのが大雑把なプロスペクト理論です。
では以下の選択肢A,Bの場合、あなたはどちらを選びますか?
A: 100万円が無条件で手に入る。
B: コインを投げ、表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。
AもBも確率論からの期待値は、どちらも100万円と同額にもかかわらず、多くの人が堅実性の高い「選択肢A」を選ぶことが実験から証明されています。
では次の質問はどうでしょう?
前提としてあなたが200万円の負債を抱えているものとし、その時あなたは以下のA、それともBのどちらを選びますか?
A: 無条件で負債が100万円減額され、負債総額が100万円となる。
B: コインを投げ、表が出たら全額免除されるが、裏が出たら負債総額は変わらない。
コチラも確率論からの期待値は、どちらも100万円と同額ですが、実験で証明されたのはBを選ぶ人が多かったということです。
このことから冒頭に説明した通りで、『人は利益を目の前にすると、利得は少しでも確実に手に入る方を選び、損失を目の前にすると一か八かでも損失そのものを回避したがる』というのがプロスペクト理論です。

ではプロスペクト理論を架空の農家に当てはめてみましょう。
あなたは米農家の社長で、国から減反を迫られていました。
A:飼料米を作ると補助金が確実に100万円入ってくる。
B:高付加価値の主食米を作って売れると200万円入ってくる。売れなければ¥0。
(あくまで架空なので手間暇はA,B変わらない、Bの売れる確率1/2ということで)
この判断が正しいかどうかは別にして、プロスペクト理論上は、Aを選ぶ農家が多くなるはずです。
なぜなら人は利益を目の前にすると、少しでもいいから確実に利益を得たいと思う動物だからです。
ではつづいてあなたが農家の従業員だった時です。
A:水稲を移植で作ると反収が確実に8.5俵で作れる。
B:水稲を直播で作ると反収は移植と同じで手間が1/2で作れる。しかし確立1/2で反収が半減。
現実にはこんなに単純ではありませんが、プロスペクト理論上Aを選ぶ従業員が多いはずです。
これはあくまで架空の農家の社長の判断、従業員の判断ですが、現実にはコインを投げて裏か表か1/2なんてこともありませんし、出来るだけBで成功する方法を模索する方が将来の変化に対応ができることでしょう。
Aを選択するのはその時点では確実でしょうが、将来の変化には対応しづらく延命処置にすぎない可能性があります。

再びプロスペクト理論を架空の農家に当てはめてみましょう。
米とキノコの農家で、米部門は黒字事業だが、キノコ事業は赤字となっている。
あなたはキノコ事業の責任者で、社内や社外問わず周囲から「絶対に成功させてほしい」と非常に期待されています。
A:キノコ事業の改善策Xを実行すると赤字は確実に半減する。
B:キノコ事業の改善策Yを実行すると赤字は50%の確立でチャラになるが、もう50%は赤字が2倍になる。
(コレもあくまで架空ということで)
コチラも現実ではこんな単純ではありませんが、プロスペクト理論上は、Bを選ぶ人が多くなるはずです。
なぜなら人は損失が確定的である時は、たとえ確立半々でも損失をゼロにできる希望があれば、それに掛ける人が多いというのがプロスペクト理論で証明されています。
この場合は確実に赤字を半減させる改善策Aと掛け合わせで、更に赤字幅を縮小できることを堅実に考えることも大切ではありますが、ギャンブル好きかどうかは別にして、周囲の期待に応えて赤字をゼロにしたいという気概を持つことは大事なことです。
ややもするとサラリーマン的な考えで、赤字のことを気にしない社員がいるのは大問題です。新型コロナウィルスではありませんが、羅漢者が会社に一人いるだけで、どんどんほかの社員に伝染していくように、赤字を気にしない社員を放っておくと大変なことになります。

プロスペクト理論では、人は「確実(安易)な利益に飛びつきやすい」「危険そのものを回避できるならギャンブルでも厭わない」性質を誰もが持っているので、小さな判断であろうと大きな判断であろうと、そのことを常に念頭に置いて判断する必要があります。
経験や勘といった主観も大切ですが、客観的な事実に基づいた判断の方がどんな結果になっても後悔することは少ないでしょう。
少なくとも絶対にやってはいけないのは感情に左右された判断です。
経営判断、投資判断、採用判断、作業可否判断、施肥判断・・・あらゆる判断の連続が付きまとうのはどの仕事でも共通ですが、こと農業に関してはその判断が直接的に収量=売り上げに直結する点でもあるのですが、それを天気のせいにしまいがちな点です。
他の産業にも農業同様に天候のような予測不可能な要素はあり、農業だけが特別なわけではありません。
今回のコロナ禍を例にとると、製造業やサービス業にも大きな損害を与え、特に飲食店への影響は甚大です。
これからはどの産業でもこのコロナ禍から抜け出すための判断の連続となるでしょうが、判断すらせず変わらず旧態依然のまま仕事をすすめているところがあるとしたら、そこは間違いなく淘汰されていくことでしょう。
この続きはプロスペクト理論を応用した売上げ向上のポイントについて、ライトに投稿したいと思います。
プロスペクト理論は経済学でもあり、また心理学でもあるのでマーケティングにおいても、多様化する顧客の購買意欲を掻き立てるには非常に有効的な手段ですょ。
私もかつて数千万円するシステム開発から、2~300万円のクルマ、ワンコインのお手軽メンテナンスまで様々な販売を経験していますが、お客様を購入に踏み切らせる一つのポイントはプロスペクト理論で説明が付きます。
いかに今『これはお得である=買わないと損だ』ということを訴求するのがポイントで、仕事での判断は感情に左右されてはいけませんが、お客様が購入に踏み切るかどうかは『買わないと損だという感情』に訴えたいものです。