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【Whyトヨタ式】トヨタ式でどのように農業の改善をするのか?/ トヨタ式改善2つの切り口「大部屋化・内製化」【中編】

この中編ではトヨタ式改善2つの切り口の一つ目である『大部屋化』について語りたい。
前編では「 世界で根付くトヨタ生産方式」「日本人の食料は誰が作っているのか?」「日本以外の先進国食糧事情は?」の3つについて書かせてもらった。
要約すると、日本の食料自給率は世界に比べて低く、このまま輸入に頼った食糧事情では、特に有事の際に困窮する。
だからというわけではないが、一つでも多くの農家が今よりも生産性を向上することが大事
ということだ。
中編はその核心『どうやったら”ある一つの農家の 生産性を向上させられるか?』ということで 、まず一つ目「トヨタ式の改善2つの切り口で、日本の農業は変えられる!”大部屋化”」 について書いていく。
農家さんがもっと楽して儲けるためのトヨタ式改善の一つの手段だ。

トヨタ式の改善2つの切り口で、日本の農業は変えられる! ”大部屋化”

お米1俵当たり生産コスト
図1)農水省H18年資料 お米1俵当たり生産コスト

わかりやすく米農家の例で話は進めるが、基本的には米に限らずどんな農産品も同じと考えてよい。
上記の図1は農水省の資料で、経営面積別の水稲農家が、お米1俵当たりどれくらいの経費が掛かっているかを現している。
全農家の平均では 1俵(60Kg)のお米を作るのに ¥16,824かかっていることがわかるので、当然それ以上の価格で売れなければ赤字となる。

一方でそのお米がいくらで取引されているかも農水省の資料で確認することができるが、H30年産米の令和元年6月の相対取引価格は全銘柄平均¥15,702 /俵となっている。
つまりお米売価 ¥15,702 - お米 製造費 ¥16,824=△¥1,122の赤字である。
絵にかいたような赤字である(-_-;)
こんな農業・商いでは、持続的発展もへったくれもない。

これでは農家さんが倒産してしまうので、日本の農業問題とか食料自給率がなんて言ってる場合ではない
なんとしても農家さんには儲かってもらわねば困るのだ。
以下の図2は、農水省の資料でお米1俵の取引価格の推移を現しているが、赤太線が直近のデータであるH30年産の取引価格である。

お米1俵の取引価格
図2)農水省資料:お米1俵の取引価格

しかしもう一度図1をよく見てもらいたい。
農家の経営面積によっては赤字ではなくなることがわかる。
経営面積が3.0Ha以上になると、取引価格よりも製造費が下がり、初めて当たり前の商い=黒字経営ができるようになり、15Ha以上の農家の平均製造費は¥10,964となるため、1俵当たり¥4,738の黒字になる。
これは農水省資料のコメントにもあるが「規模が大きくなるに伴い農業機械の効率的利用等による労働費、農機具費等の減少が著しいため」とあるように、大規模農家であれば効率的な製造原価により黒字にできるということだ。

これは言葉を変えれば、生産効率を高められさえすれば、面積の大小にかかわらず黒字化できるとも言える。
つまり黒字幅の実現性を広げ高め、儲かる農家・持続的発展可能な農家になるためには、面積を大規模化させつつ生産効率を上げる改善を積み重ねることが答えの一つとなる。
面積を変えないなら、いかにいまより手間をかけず、小時間、少人数で現状の生産量を確保し、浮いた時間や浮いた人員=余力で他の儲けを見つけること、が答えといってよい。

国内生産の農産物総額約9.6兆円が、国民の口に入るときには約83兆円になっている。途中の約73兆円は誰のもの?

H27食用農林水産物の生産から飲食料の最終消費に至る流れ
図3) 農水省資料: H27食用農林水産物の生産から飲食料の最終消費に至る流れ

上図3を見てわかることは、左上に食用農林水産物の生産段階で11,274x10億円が、右上の飲食料の最終消費段階では83,846x10億円 にまで膨れ上がっていることがわかる。
食用農林水産物の生産段階は、農林漁業での国内生産の9.677兆円と、輸入食用農林水産物1.598兆円で構成されていることもわかる。
よって簡単に言うと「国内生産の農産物総額約9.6兆円が、国民の口に入るときには約83兆円になっている」ということだ。
また農水省の最新別資料( 農業・食料関連産業の経済計算 / 平成29年農業・食料関連産業の経済計算 )によると、農林漁業での国内生産は約12.8兆円で、その内訳として農業が10.97兆円林業0.22兆円漁業1.59兆円となり、農林漁業での国内生産額とは”そのほとんどが農産物 と思ってよいということになる。
蛇足だが、農水省とつい省略するが、正しくは林業も含む農林水産省が正式名称だし、口に入る林業の代表は林業経営統計の栽培茸経営統計から原木栽培のシイタケや乾燥シイタケなどが主となり、0.22兆円になっていると思われる。

つまりここまでを乱暴に言うと国民一人々の口に入って最終消費する総額83兆円の大元は、国内の農家さんが作った農産物の総額である約10兆円だが、その途中の流通や加工、製造業、外食産業などの”中間産業で73兆円の付加価値が付いて ” 国民の口の中、胃袋へ入っていく」ということだ。
これも儲かる農家、持続的に発展可能な農家になるための答えの一つで、国はよくこれを6次化と呼んで、農家に農産物を作るだけでなく、加工して直接販売する6次化を奨励している。
農業という1次産業だけでなく、農産物を加工製造する2次産業と、更にそれを販売サービスする3次産業を掛け合わせると6次産業になるという”へ理屈 ” から生まれた言葉だ。

前段では、儲かる農家・持続的発展可能な農家になるためには、面積を大規模化させつつ生産効率を上げる改善を積み重ねることが答えの一つと記したが、この6次化は面積といった規模を拡大するのではないが、事業規模を拡大することなので同義でもある
つまり規模拡大とは経営面積であったり、事業規模であったり、作付け品目や品種であったり様々ではあるが、注意しなければならないのは”生産性が向上しない規模拡大 ” は当てはまらない
この理解は文章だけでは難しいかもしれないが、生産性を向上し、余力が生まれてそれを他の規模拡大に使うのは正しい規模拡大ということである。

よって農家さんが第一に行うべきことは、間違いなく生産性の向上であり、その結果生まれた余力を大部屋化に使う、つまり規模拡大を経営面積だけでなく、6次化への事業規模拡大の方面へも部屋を広げることだ。
なにしろただ農産物を作って卸しているだけでは農産物の生産総額約10兆円は増えることはないが、その農産物は中間の2次産業と3次産業を経て確実に83兆円まで膨らむのである。
その差73兆円の世界・業界で生きている方に、潰れてくれとは毛頭思わないが、最上流である生産者が最も儲からない苦しい世の中になっている日本が、これ以上持続的に発展することは断じてないであろう。
中間で生まれている約73兆円のうちいくばくかを生産者は自らの努力により還元しなければ、これから先生産者である農家は生き残れないであろう。

大部屋化とは?

わかりやすい!大部屋化
図4)わかりやすい!大部屋化

さて、ここが中編の核心である大部屋化(図4)だ。
『どうやったら”ある一つの農家の 生産性を向上させられるか?』
農家さんがもっと楽して儲けるためのトヨタ式改善の一つの手段だ。
前段でも 農家さんが第一に行うべきことは、間違いなく生産性の向上であり、その結果生まれた余力を大部屋化に使う、つまり規模拡大を経営面積だけでなく、6次化への事業規模拡大の方面へも部屋を広げることだ と説いた。
そうでなければ、繰り返しになるが、ただ農産物を作って卸すだけでは中間で吸い取られて何の利益も農家にリターンされないのだ。
このことから規模によっては赤字になるのが米農家なのだ。
いくら作っても、かかった費用より買取価格の方が低い世の中なのだ。
補助金ありきの農作物があることからもわかると思う。

では実際に大部屋化とはどうすることか?
景気だけでなく、天気などの変動要素により農家で作る農作物の量は常に変動する。ものによっては豊作すぎても迷惑なことがあるくらいに上振れも、またその正反対の凶作もあるのが農業の常だ。
そして完全な正比例ではないものの、農作業も景気や天候などにより大きく変動する。そのいい例が農繁期と農閑期という農作物の状況によっては滅茶苦茶に仕事が忙しかったり、その正反対であったりするものだ。
図4の大部屋化の説明図をよく見てほしい。
仕事量は変動して当たり前だ。
しかし変動が当たり前なのにもかかわらず、多くの仕事(会社)はそれを人や組織といった専門の部署に偏らせているのが実情だ。その方が専門的に早く仕事を片付けられると思っている節がある。
トヨタではその逆だ。できるだけ専門的にならないようにすることが肝要だ。
でないと仕事が属人化してしまい、その人やその部署でしか仕事ができなくなってしまい、仮に暇な人や暇な部署があっても応受援できなくなってしまう

「バラバラの仕事を誰でもできるように標準化すること」「組織の壁、物理的な壁を取り払い、仕事をシェアできる(助け合える)ようにすること」これが大部屋化であり、その最大の目的は変動に対して強くなることである。
作ったものはお金に換わらなければ意味がない。
だからたくさん作りたくなるが、売れないものをたくさん作っては余計に大変だ。
よってたくさん儲けるためには、たくさん売れるようになるという売れるように変動させることが重要で、農家にとってはそれがただ農作物を作るだけではなく、加工や販売といった6次化への事業規模拡大が必要になってくるということだ。
そのためには農作物を作る1次産業の工程のいくつかを、できるだけ誰でもできるように標準化を進め、仕事をシェアし助け合えるようにならなければ余力である人を1人工捻出し、売れるように変動させる仕事をすることは不可能である。
ココが非常に重要なところだ。
先祖代々続く農家ほど、レール通りに農作物を降した方が楽だろうが、まずその卸価格は古いレートのままで、物価は上昇して下流の消費者は高い金額を支払っているが、中間業者がそのまま儲けた分を生産者に素直に払っているとは思い難い。

これも繰り返しになるが、中間で生まれている約73兆円のうちいくばくかを生産者は自らの努力により還元しなければ、これから先生産者である農家は生き残れない。 つまり今の農家はもう農作物を作るだけでなく、作ったものを加工して、流通して、販売まですることが必要だということと、それを自らが積極的に変えてやっていかなければならないということだ。
加えていうなら他の2次産業や3次産業と同じようにということだ。
なお当たり前だが、2次産業や3次産業には自社製品を造るのに1次産業のように国の補助金はない。

ここまで大部屋化、理解してくれたであろうか。。。
次回は後編として 「トヨタ式の改善2つの切り口で、日本の農業は変えられる!”内製化”」について語りたい。

コメント一覧

山謙プロ2020年3月4日 10:57 / 返信

この投稿のサムネイル画像に病院の個室ではなく大部屋が使われていることにお気づきだろうか? 本投稿の「大部屋化」も病院の大部屋と考え方は同じだ。 いろんな病状の患者さんを物理的な壁である個室で診るよりも、複数人部屋で一人の万能の医師が見る方が効率的なのは火を見るより明らかだ。 病院が大部屋化できるのは、やはり物理的な壁がないことと、もう一つ重要なことは医師が単能工でないことだ。 このように仕事を効率化するヒントは身近にもたくさんある。

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